研究目的

 本研究では、難治性自己免疫疾患に対する自己造血幹細胞移植症例の免疫再構築過程を分析することにより、その劇的臨床効果の基盤となる分子生物学的基盤を明らかにし、次世代造血幹細胞移植療法の開発に向けた基礎データを集積する。1995年に従来の治療に抵抗性を示す自己免疫疾患に対し、大量化学療法後に自己造血幹細胞を移植し、正常リンパ球を再生し自己寛容を誘導する、いわゆる「免疫再構築療法」が提唱され、欧米において現在臨床第III相試験が進行中である。移植した純化造血幹細胞から新たに自己寛容を有するリンパ球を分化させることで、疾患が治癒または寛解に導かれることを期待する治療法である。本邦においては、我々が先駆けとして、2002年より生物学的製剤を含む従来の治療に抵抗を示す重症自己免疫疾患患者を対象として、純化自己造血幹細胞移植術を施行してきた。23例全症例が安全に治療を完遂でき、多くの症例で劇的臨床効果が見られ、さらに長期寛解が得られている。本研究では、これらの既移植症例および新規移植症例における移植前後の免疫再構築を経過に沿って分析することにより、この劇的臨床効果が得られている基本メカニズムを明らかにする。すなわち1)移植前の大量化学療法による自己反応性T細胞の除去、2)自己寛容を有する正常の免疫再構築の獲得、3)制御性T細胞等の抑制免疫システム優先的再構築、などの重要性を検討する。具体的には、これらの移植症例において経時的に、再構築リンパ球亜分画の量的変化の詳細な追跡、および各分画のmRNA、microRNAの発現プロファイル変化を解析することにより、本治療法の有効性と制御性T細胞を含むリンパ球分画・機能の変化との関連、さらに移植後の病勢の改善に関連する標的候補分子を新たに同定する。さらにこれらの結果に基づき、患者末梢血より制御性T細胞を増幅し造血幹細胞とともに移植する等の、自己免疫疾患根治に向けた次世代自己造血幹細胞移植術開発への基礎データを得る。これらの一連の研究は、臨床研究に関する倫理指針などの関連指針や施設内規定に基づいて適正に施行する。

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