研究計画

1.難治性自己免疫疾患に対する純化自己造血幹細胞移植の臨床第II相試験

進行性の強皮症、急速進行性間質性肺炎を合併した皮膚筋炎を対象に、自己造血幹細胞移植術の有効性を検討する臨床第II相試験を継続する。症例の選択・経過観察は、免疫膠原病感染症内科の堀内・塚本・新納が行い、造血幹細胞移植は血液・腫瘍内科の赤司・宮本が施行する。シクロフォスファミド(CY)4g/m2とG-CSFを用いて末梢血造血幹細胞を動員し、アフェレーシスにて末梢血単核球を回収後、CD34陽性細胞を分離する。これらの細胞操作は、九州大学病院輸血センターおよびGMP施設において厳密な管理の下に行う。移植前治療としてCY200mg/kgを投与し、移植第0日に保存しておいたCD34陽性細胞(2x106/kg以上)を輸注する。移植は当科の管理する九州大学病院無菌病棟で施行する。目標症例数は強皮症10例(期待有効割合80%、閾値有効割合40%、検出率80%)、皮膚筋炎5例(同70,20,80%)とする。主要アウトカム評価項目を強皮症では1年後の寛解率(スキンスコアの改善25%以上)、間質性肺炎合併皮膚筋炎では1年後の肺活量の改善(10%以上)とする。安全性は共通毒性基準(NCI-CTC)を用いて評価を行う。以上の臨床試験には、平成22-24年度の全期間を要する。

2.自己造血幹細胞移植後の免疫学的再構築の解析

移植後の本治療法の有効性とリンパ球機能変化との関連を明らかにする。本治療法において、病気の活動性を示す免疫パラメーターとリンパ球サブセットは緩やかに回復し、プラトーに達するまでに移植後数年を要する。したがって既に移植し寛解を保っている18 例および新規移植症例の免疫システムの経時的変化を平成22-24年度の全期間において解析する。移植症例の経過観察を塚本・堀内・新納が担当し、これらの症例の新規採取検体および保存検体を用いて、赤司・宮本・新納を中心に、リンパ球分画分析・機能分析・遺伝子プロファイル分析を行う。赤司が主宰する当院遺伝子細胞療法部では、マルチカラー解析・細胞ソーティングシステム(FACSAria SORP)やIllumina microarrayシステム等の機器が常時稼働しており、ヒトの末梢血細胞分画の8カラー分析による詳細な検討が可能である(J Exp Med, 2008; J Immunol, 2007)。得られた結果を堀内・塚本を中心として臨床経過と以下の解析を照合し統合的に整理する。1)再構築リンパ球の解析ではナイーブT細胞、メモリーT細胞の再構築をみることにより、移植後新たな胸腺由来ナイーブT細胞の増加の有無を明らかにする。2)Th1/Th2/Th17バランスを継時的に測定する。3)純化ナイーブ・メモリーT細胞をcDNAアレイ、microRNAアレイを用いて、網羅的に遺伝子発現プロファイルの経時的変化を調べ、移植後の病勢の改善と関連する標的候補分子を新たに同定する。4)最近報告されたCD8+CD161highIL-18Rhigh memory stem cellの継時的変化を観察し、この分画とCD8陽性T細胞の回復との関連を調べる。5)本法においては、移植片に制御性T細胞(Treg)を含まない。そこで純化造血幹細胞と制御性T細胞の同時に移植する次世代移植療法開発に向けた基礎データを集積する。上記症例より制御性T細胞の移植前後の経時変化を観察し、特に移植後の無効例や二次性の自己免疫現象を合併した症例における制御性T細胞低下の有無を検討する。さらに、移植前のアフェレーシスサンプルよりCD4+CD25+GITR+の制御性T細胞 (Shimizu J et al. Nat Immunol 2002) を分離しこれらのex vivoにおける増幅の方法を検討する。

  • メニュー
  • メッセージ
  • 研究組織
  • 研究概要
  • 研究計画
  • 研究成果
  • ニュース
  • リンク
  • サイトマップ
  • ホーム