研究目的

 TNF受容体関連周期性症候群(TNF receptor associated periodic syndrome; TRAPS)は、発熱、皮疹、関節痛、漿膜炎などを繰り返し、時に重篤なアミロイドーシスを併発する常染色体優性の遺伝性疾患であるが孤発例も報告されている。TNF受容体1型の遺伝子変異が原因とされ、本邦では2004年にはじめて私ども(Horiuchi T, Int J Mol Med 2004)など複数の施設が報告して以来、現在までに6例の報告があるにすぎないが、欧米では100例以上の報告があり、潜在患者は少なくないと考えられる。TNF受容体の分子異常がどのように病態形成に関与しているかは不明であり、症例によっては遺伝子異常が同定されない場合もある。

 研究の目的は、1)TRAPS患者について臨床所見、分子診断を集積し、細胞生物学的に病態の解明を行い、2)本邦TRAPSの診断基準の作成を行い、疾患概念を確立する。3)TNF受容体だけでなく、その下流のシグナル伝達分子の変異についても検討し新しい原因遺伝子を解明する。具体的には、全国の病院に調査票を送付して疑い患者を把握、症状の再評価、希望により遺伝子解析を実施する。加えて本研究の特徴は、TRAPSに類似した症状を示すベーチェット病、成人スチル病、若年性特発性関節炎(JIA)の3疾患に着目して、これら3疾患の診断基準を満たさず疑いあるいは不全型と診断された患者の中にTRAPSが紛れ込んでいないかを重点的に検討する。

 本研究の特色ならびに有利な点は、第一に私はTNFならびにTNF受容体の分子異常と慢性炎症性疾患との関連について、基礎的、臨床的、分子疫学的研究を行ってきたことにある。とくに@TNF受容体の多型と機能変化、その結果としての疾患との関連(Nature Genetics 2001, Arthritis Rheum 2001、Ann Rheum Dis 2007、Rheumatology 2009、J Rheumatol 2009)、A抗TNF製剤の作用機序(Gastroenterology 2004、 2005、Arthritis Rheum 2008)を解明してきた。@の研究の過程で、TNF受容体や関連分子の変異や機能を効率よく解析するシステムが構築できており、TRAPSの病因、病態の解明に応用できる。またAの研究は、TRAPSの治療法として有力な抗TNF製剤について最適の製剤の選択、使い方の検討に役立つ。第二の特色は、今回、全国規模のTRAPS研究班を組織し、厚労省ベーチェット病に関する調査研究班班長(石ヶ坪教授)、特定疾患の疫学に関する研究班(鷲尾教授)、日本小児リウマチ学会運営委員長(武井教授)、成人スチル病研究会の会員に参画いただいていることであり、厚労省研究班や学会の後援も得ながら小児科から内科まで重層的にTRAPS患者の同定が可能になった。

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